社会的孤立は身体的痛み
最近読んだ良書である橘 玲 著書の「スピリチュアルズ」には社会的孤立について書かれている箇所がある。社会的孤立とは、家族や学校や会社といったコミュニティとの接触がない状態のことである。
他者から排斥(仲間はずれ)にされると、人の脳はどのような反応を示すのかについて、社会心理学者がサイバーボールという実験をおこなって検証した。
これはオンラインでおこなうゲームで、3人で円盤を投げ合うというもの。被験者以外の2人はコンピューターだが、被験者には実在する人物だと思わせている。
最初のうちは3人で投げ合うのだが、途中から被験者を仲間はずれにしてコンピューターの2人だけで投げ合うようになる。
そうすると仲間はずれにされた被験者に、疎外感、無力感、気分の落ち込み、生きる意味が薄れるといった悪影響を及ぼした。
このときの被験者の脳は、身体的苦痛を感じたときに反応する部分が活発化した。このことから、社会的孤立(仲間はずれ)は身体的苦痛を伴うのである。
社会的孤立に対してHSPのわたしの見解
社会的孤立による身体的痛みは、孤独死にも関連している。社会的に孤立している人は、孤立していな人に比べて早期死亡リスクが50%も高くなると言われている。
社会的孤立は、周囲からの支援を得ることが難しく、抑うつ、脳血管疾患、認知症、アルツハイマー病、その他様々な疾患にかかりやすく、その結果、死亡のリスクが高くなるとされている。
また社会的孤立は、貧困層や障害をもつ社会的弱者に多いといわれている。
そして、孤独死に貧困層が多いというデーターが示されていることから、社会的孤立に陥る可能性の高い貧困層は、そうでない高所得層と比べて死亡のリスクが高いということになる。
また人との交流が週1回未満から健康リスクが高まり、月1回未満だと死亡リスクも高まる(斎藤ら2015)というデータもある。
上記のようなことから考えると、確かに社会的孤立に陥ることは人間にとって死を招く危険性がある。
しかしそれと同時に、長期的な人間関係を築くことが難しい特性を持ったものにとっての社会活動は、人間関係の悪化により死を招く危険性がある活動でもあると感じる。
そして家族や文化といった自分の周りを取り巻く社会的要因が、自分の精神的な健康に影響を及ぼす。
2017年の精神疾患を有する患者数419.3万人。外来患者のうち207.4万人は気分障害(うつ病、双極性障害等)、神経障害、ストレス関連障害、身体表現性障害である。これらの障害の原因は、生物学的要因、心理学的要因、心理社会的要因が交錯して起きるものであるとされている(これを「生物心理社会モデル」という)。
HSPのような超繊細な特性は、遺伝的要因に当てはまるが、その特性が自尊心やストレス処理能力に影響を及ぼすことから、心理学的要因にも当てはまると言える。
このように各要因が相互に影響し合うことによりHSPの特性を持つものは、精神疾患に繋がりやすい傾向にあるのではないかと考える。
気分障害(うつ病、双極性障害)、適応障害、神経障害などの障害は、ストレスとの関連性が高い。ストレスの原因の多くは人間関係によるものである。
HSPはストレスに強く影響を受けることから、精神疾患に罹患する確率も高くなるのではないだろうか。
上記のまとめと考察
社会的孤立は身体的痛みを伴い、それが続くことにより健康状態を悪化させ、そして最後には死に至らしめる。
そして貧困層ほど高リスクに曝されている。
しかし、社会に上手く適応できない者は、精神疾患により社会活動から退場することになり、最悪の場合は死に至る。このことから、社会的な生き物である人間にとって社会活動は必須のものであるといえる。
そして社会活動もうまく適応できない場合、心身ともに病んでいき、精神疾患へとつながる危険性がある。
HSPなどマイノリティな特性を持ったものは、一般常識への適合が難しい場合があり、適合できないと自己肯定感が低下する。
自己肯定感の低下が続くと社会参加が難しくなり、社会的に孤立することになる。
HSPの特性が社会的孤立に影響を及ぼす場合、一般常識を取り払って対策する必要がある。
しかしHSPはハッキリと定義して線引きできるものではなく、スペクトラム(連続体)である。
HSPという特性は、いつくかの特性から成り立つものだが、「あなたはA特性」ですという単純なものではなく、「あなたのA特性は5段階中3で、B特性は5です」といったような尺度水準で測るほうがより的確に特性を理解することができる。(尺度水準で測った数値をレーダーチャート(五角形のグラフ)のようなもので表すと、自分の特性を視覚的に把握できる)
このようなことから、その人のHSPの各水準を基にして、個々にあった社会に適応する術を考える必要がある。
わたしの場合、音に対する感度が高いため他の人がなんとも思わないような音でもストレスを感じてしまう。
また、深く考えすぎるため人間関係からくる小さな悩みも時間が経つにつれてどんどん大きくなっていき、最初は小さなストレスだったものが大きなストレスに変わる。
HSPについて書かれた本の多くには、「深く考えすぎることは、仕事でリスク回避能力として発揮したり、相手を深く理解するカウンセリングに向いている」などと書かれていたりする。
しかし、それはHSPの尺度水準が会社などの集団内で最低限適応できるものであればの話しだ。
また、人間関係によるストレスの蓄積のスピードが早く、ストレスの蓄積が解消を大きく上回るため、会社勤めは選択肢に無い。人間関係の嵐に飛び込むようなものだからだ。
わたしは、自分の特性にあった働き方として個人事業主を選択している。
個人事業主といってもなんでも良いわけではなく、必要最低限の人間関係で、しかも時間の使い方を自分でコントロールができる仕事しかやらないようにしている。
詳細はHSPで飽き性は転職の繰り返しで悩む【解決策】で書いてある。
HSPの特性が大きく偏っている場合、学校を卒業し会社へ就職といった一般的な社会生活への適応が難しい人も多いのではないだろうか。少なくともわたしは社会不適合者だ。
しかしそのような場合であっても、自分の特性を理解することができれば、一般常識から離れて無理のない社会生活を送る術を身につけることができる。
社会不適合であっても、社会との完全な孤立を回避しつつ、社会との適度な距離を保ちながら生きることはできる。わたしはそれを積極的孤独で実践している。消極的孤独は、自分が望まない孤独であり、社会的孤立のような健康リスクや死亡リスクが高まる原因である。
それとは違い、私の言う積極的孤独は、協調性よりも主体性を重視し、人間関係よりも自分の時間を重視した生き方である。積極的孤独については、また別の機会で書くことにする。
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